風邪

小平太が熱を出して早退してきた。私の会社は休日が不定期で、丁度今日がその休日であったので急いで会社まで迎えに行った。小平太はあまり体調を崩さないが、その分一旦崩れると治るまでに時間が掛かる。今もベッドで横になり、低く唸りながら何度も寝返りをうっている。

「小平太…」

何か栄養のあるものを、と思い在り合わせの材料で粥を作り果物も剥いて寝室まで運んだはいいが、とても食べられそうな状況ではなかった。枕元に腰を降ろすと小平太の目蓋が開く。真っ赤な顔と潤んだ瞳と荒い息遣い。つらそうだ。

「ちょ、じ」

汗で額に張り付いた髪を払ってやると小平太が掠れた声で袖を引っ張る。眉間に寄せられた皺が苦痛を物語っていた。もういっそ私に移してしまえばいい、と、頭で考える前にいち早く体が動き、気付けば小平太に口付けをしていた。

「…だめ…だ」

唇を割り隙間に舌を差し入れ、いつもより熱い舌を吸った。小平太は驚いたように暫くは弱い力で私を押し返そうとしていたが、観念したのかすぐに目蓋を閉じて大人しくなった。いつもこれくらい大人しければ、とも思ったがやはりされるがままの小平太は、小平太らしくない。唇を離すと小平太のこめかみには涙が伝っていた。 

「泣くほど…嫌だったか?一応、お前の為に…したこと、だが」

無理をさせてしまっただろうか。涙を拭ってやると小平太が小さく首を振って否定する。

「うれ…しいぞ。なぁ、一緒に…寝て…つらい」

小平太の言う通りベッドに入って寄り添うと、小平太はすぐに私にしがみついてきた。耳元で苦しそうな息遣いをされるのは正直拷問だったが、何とか理性を手繰り寄せてぐっと我慢する。暫くは唸っていた小平太だったが、次第に薬も効いてきたようで添い寝を始めて一時間経つ頃にはもう大分落ち着いて眠りについていた。粥も冷め、果物も色が変わってしまったが、とるに足りないことだった。小平太はいつも自分も気付かない内に無理をするから、こんな時ばかりは休んでほしい。そうして私達はそのまま陽が落ちるまで共に眠った。

翌日私が高熱を出したのは言うまでもない。

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なんだか最近文章が書けません。なんでだろう…
やっぱり気に入ってない文章は載せたくないので、これも結構何度も書き直しました。
スランプってやつかしら…
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